「このアスクルの請求書ですけど、この文房具類あなたの個人の注文って言わはるじゃない」 優紀子が部屋に入るやいなや、肘付回転いすに深く座った高山靖子と、その傍らに豪が立ったまま腕を組んで待ち構えていた。 「それは辻崎さんに会社の備品と一緒に注文してもらったもので、請求書が来た時にお金を払うつもりで... 続きをみる
2017年11月のブログ記事
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篤郎が退職で一悶着を起こしている頃、高山テキスタイル株式会社でも大きな動きがあった。 朝、FTP経由で届いた韓国からのデータにトレース室は活気付き、昼食前にようやく落ち着きを取り戻し豪がスッと席を立って部屋を出ていくと、柿谷優紀子は最小化でタスクバーにしまっていたブラウザをモニタ上に戻した。画... 続きをみる
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翌日、昼出勤の篤朗が結婚式場ル・ソイルに出勤すると、事務所で吉峰がやはり胡乱気ながらわずかに渋面を示し手待ち構えていた。 「仲瀬ぇー、お前俺を殺す気かぁー。昨日の宴席で延々と西原さんから嫌味言われたんやぞ」 「白まで切らさせてすみませんでした。あの後揉めませんでしたか?」 ミーティングの前日に... 続きをみる
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「知人から技術を持った職人を必要としている会社を紹介され、無理を承知で出来ましたら早期退職をお願いしたいのですが・・・・・・」 株式会社マンサービスクリエーションの本社事務所、と言っても京都駅前の某複合商業施設の最上階、六畳面積も無い部屋をさらにパーティションで隔てた二畳空間で、篤朗は西原と向か... 続きをみる
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毒突いた優紀子は早々に食べ終わった弁当を鞄にしまうと、手でデスクを押し足で漕ぎながら篤郎の元へと椅子のキャスターを滑らせた。 「仲瀬さんが今行ってはる仕事場って結婚式場なんでしょ? そっちは続けられそうにないの?」 優紀子は四十三歳でトレース室では豪を除く最年長であり、パート歴も五年の実績で、... 続きをみる