ごーごごー、ごーちゃんでGo!

前職のトラウマを引きずりながらも畑違いの結婚式場の華やかな舞台を演出するため、古傷の腰痛を抱えた30台後半の主人公仲瀬は、昔の取引先の知人から職人への復職を持ちかけられる。
紹介してもらい入った会社は典型的な家族経営で父親が社長、常務に母親、そして専務は一人息子でマザコン、世間知らずで対人恐怖症、某障害の症状がすべて当てはまるようなその息子の名は豪。
豪に全てを振り回され、廃業まで追いやられた社員の信じられない日々を書き連ねたノンフィクション物語。
繰り返します。これはノンフィクションです。

2017年10月のブログ記事

  • 高山テキスタイル株式会社編 -アドバイス(前編)-

     三月に入り、篤朗が初めて来てからもう何度も足を運んだトレース室は、すっかり居心地の良い気心の知れた仲間との場となっていた。仕事の流れも大方把握し、この日も『もはや化石』のパソコンで外注から送られてきたデータを検修していた。  フォトショップのバージョンも篤朗が仕入れたCS3の最新版を導入し、パタ... 続きをみる

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  • -イリーガルコピー(後編)-

     篤朗は自分のアカウントを使って安くアップグレードが出来ることを伝えると、豪はそれならばと前向きに検討を始めた。機材は買い揃えるのに対し、無料で手に入るものには金を出さないようだ。  篤朗は早速インターネットでアドビのサポートセンターに繋ぐと、アップグレードの手続きをしようとするが、アカウント情報... 続きをみる

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  • 高山テキスタイル株式会社編 -イリーガルコピー(前編)-

    「おはようございます」  二月某日の木曜日、本職のローテーションで休みを取った篤朗は、朝十時前にトレース室に出勤した。  会社の就業時間は朝九時から夕方六時までだが、休日の朝はゆっくり体を休めてからにした方がいいと孝子の忠告に従い、少し遅れての出勤でアルバイトに就いた。 「おはよう」  トレース室... 続きをみる

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  • 高山テキスタイル株式会社編 -エクスペリエンス(後編)-

     世間を学ぶことなく社長の息子という庇護の下、ちやほやされて数十年を過ごした二世の活躍は薄く、自身で築き上げた歴史がない。父親や社員の積み上げた実績を専務取締である自分の評価とばかりに雄弁を並べる様に、優紀子は呆れ顔で朋弥に眼で語る。 「また始まったよ」  新しく会社訪問に訪れた人へのテンプレート... 続きをみる

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  • 高山テキスタイル株式会社編 -エクスペリエンス(前編)-

     白を基調とした壁紙がトレース室全体を明るく照らし、エル字に並べたデスクには六台のパソコン、部屋の入り口にはサーバー用のパソコンとその横に独立したパソコンが一台、計8台が備えられおり、奥には大判用ドラムスキャナとプリンター、そしてレーザー複合機を構えていた。  なにもかもが「製作所」の規模を超え、... 続きをみる

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  • -ファーストインプレッション(後編)-

     従来のフィルムの焼き付けの場合、フィルムをガラス台に固定して、その上に感光膜を塗ったアルミ枠を生地幅のサイズになるまで一送りで製版したフィルム(反物は基本同じ模様が繰り返すようデザインされている)の正確な距離を動かして焼き付ける必要がある。それに対しインクジェット機は、あらかじめ生地幅までのデー... 続きをみる

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  • 高山テキスタイル株式会社編 -ファーストインプレッション(前編)-

     サービス業で嬉しいと感じる瞬間は、世間が出勤日の平日にゆっくりと休みが取れることで、しかし家族や友人と予定を合わせるにはあまりに悲しい特典でもある。電話で水曜日の午後に会社訪問の約束をした篤郎にとっては嬉しいと平日の休みとなり、聞いた住所を訪ねて愛車のスズキのアルトワークスを走らせていた。  す... 続きをみる

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  • -アポイント(後編)-

     電話越しの相手に首をぶんぶん立てに振り喜びを表現している豪の、並びに座る柿谷優紀子がモニタから目を離し、右隣で豪の素振りを見ていた安浦朋弥に目を細め囁いた。 「新しい人みたいやな」 「みたいね、いい人来てくれるといいね」  優紀子の猜疑心を含んだ囁きに、朋弥は心から未だ見ぬトレース職人に希望を抱... 続きをみる

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